天願大介のなまずブログ

2014年4月4日

井村昴さんと中山さんのこと

井村さんは酒と女が大好き。飄々としてフットワークがよくてマメだから、今でも結構モテるらしい。尊敬できる先輩である。

俳優紹介の最後は、『魔王』のメイン舞台になるステーキハウスのコック役井村昴さん。そしてロケ場所を提供してくれた中山さんについて。
井村さんは俺のデビュー作『妹と油揚』の出演者で、metroでは舞台監督をお願いしている。
大変顔が広く行動的な人で、誰かのことを話していると、ああ、そいつなら会ったことあるという。どこかのことを話していると、ああ、そこ行ったことあるという。
空手と器械体操をやっていてアクションが得意、若い頃はブルース・リーの模写で黒テントの地方公演を沸かせたとか。黒テントを離れてからは、もっぱらTVの時代劇や刑事ドラマで犯人や被害者を熱演していた。

井村さんとは長い付き合いだから、いろんなことがあった。映画学校の俳優科で教えてもらったし、亡くなった奥さんが井村さんのために残した戯曲を俺が演出し、たった一日だけの一人芝居を上演したこともあった。
教育者の息子で教育大学を出ていて根は真面目なんだけど、考え方に幅があって、乱暴なアイディアも受け入れてくれる。井村さんを見ていると、変なことを面白がれるというのは才能だと思う。男は年を取ると考え方が狭くなって、新しいことを楽しむ余裕がなくなるものだ。そうでない者だけがこの世界で生き残れる。
今回のコック役は待ち時間が長かった。マメな井村さんは久留里の町を探訪し蕎麦を食ったり久留里城を見物したりしていた。久留里城に行ったとき、あれ、ここ来たことあると思い出したらしい。どこにでも出没する人である。

映画の中のステーキハウスは、実は和菓子屋さんだ。
映画では「 Горбачёв」という名だが本当の店名は「菓子司 なかやま」。
和菓子だけでなくケーキも売っている店で、にもかかわらずクリスマスも貸してくれるという。行ってみると、町から少し離れて、道路際にポツンとある感じが脚本の設定とぴったりだ。ご主人の中山光司さんは撮影に全面協力すると言ってくれた。
喫茶コーナーの白い壁を美術部が徹夜でウッド調に貼り替え、小道具を持ち込んで飾り、「なかやま」は一週間だけステーキハウス「 Горбачёв」に変身した。その内装を中山さんが気に入ってくれ、現在「なかやま」の内装はステーキハウス風のまま残っている。
無茶な撮影で迷惑をかけているのに、合間に珈琲をいれてくれたり特技のマッサージまでしてくれた。聞けば中山さんは俺が昔脚本で参加した濱マイクの映画の大ファンで、そういう偶然も嬉しい。
クランクアップは12月30日「なかやま」の前。すべてを撮り終えた我々は映画界の慣習通り集合写真を撮った。もちろん中山さんも一緒に写っている。
映画は簡単に撮れない。いつだって無理をして撮る。不可能に近い無理も多いし、自分たちの力だけでは絶対に突破できない。だからどうしてもいろんな人に迷惑をかけてしまう。これまで、いろんな土地のいろんな人たちに迷惑をかけ、そして力を借してもらった。忘れがたいことが沢山ある。
しかも今回は勝手に撮る自主映画だ。内容も普通の映画とかなり違っているし、映画館で上映もしないしTVにかかることもレンタル屋に並ぶこともない。それでも中山さんをはじめ、多くの人たちが力を借してくれた。お世話になりました。本当に感謝しています。
久留里に行くことがあれば是非「なかやま」にお寄り下さい。魔王はいませんが、一本歯の下駄を履いた御主人がいます。

クランクアップの集合写真。真ん中に立つのが中山さん。2013年12月30日久留里にて。